- INTERPOLが、生成AIで作った偽の映像や音声(ディープフェイク)を使う詐欺への啓発キャンペーンを始めた。[1]
- INTERPOLは、誤字や体裁の不自然さといった詐欺の目印を、AIが消しつつあると指摘した。[1]
- キャンペーンは、日本政府が資金を出す東南アジア向けの事業「Project SynthWave PLUS」の一環である。[1][2]
国際刑事警察機構(INTERPOL)は2026年10月19日、AIで生成・加工した映像や音声を使う詐欺に注意を促すキャンペーンをシンガポールで始めた。[1] 生成AIは高い技術や投資がなくても使え、ネット上の少しの素材から実在の人物の顔や声を再現できる。INTERPOLイノベーションセンターの安平敏信所長は、AIが詐欺の目印を消しつつあると述べた。見た目や話し方で偽物を見破る対策が通じにくくなっている。
1. 何が起きたのか
キャンペーンでは、ディープフェイクが詐欺にどう使われるかを伝える3本の短い動画を公開した。動画そのものもAIで作られている。合言葉は「待つ、確かめる、餌に食いつかない」である。[1]
INTERPOLによると、合成した映像や音声を使う犯罪は、かつては主に著名人を狙うものと見られていた。いまは一般の人も、投資詐欺、なりすまし、恋愛詐欺、性的な脅迫などの標的になっている。具体的には、同僚を装ったビデオ通話での送金依頼や、困っている家族を装った電話といった形をとる。[1]
INTERPOLは注意すべき兆候として、突然の連絡、急がせる言動、感情に訴える働きかけ、送金や暗号資産、ギフトカードといった追跡しにくい支払い方法などを挙げる。企業に向けては、ディープフェイクやボイスフィッシング、ソーシャルエンジニアリングの研修を義務づけること、送金やデータ移転に多段階の確認手順を設け、多額の場合は対面で確かめることを勧めている。[1]
日本政府の資金で、INTERPOLが東南アジアのディープフェイク対策を進める
捜査機関向けの研究と研修に加え、一般の人と企業に向けた啓発を始めた。
INTERPOLイノベーションセンター
出典 INTERPOL(2026-10-19)、Project SynthWave、Project SynthWave PLUS
2. なぜ今なのか
INTERPOLは2025年3月から2026年2月まで、日本政府の資金で「Project SynthWave」を進めてきた。対象は東南アジアのブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの9か国である。[3]
AIで、詐欺は見分けにくく、誰でも狙われるものになった
INTERPOLの発表から、これまでの詐欺とAIで作る詐欺を並べる。
出典 INTERPOL(2026-10-19)
この事業では、合成メディアが捜査に与える影響を調べた研究報告「Forged Realities」と、脅威と対応策をまとめた実務の指針「False Facades」を作った。デジタル証拠が本物かどうかを確かめる手順づくりや、捜査員の研修も行った。[3]
2026年3月からは、後継の「Project SynthWave PLUS」が2027年2月までの予定で始まっている。こちらも日本政府が資金を出し、研究、啓発、研修、産業界や学術界との連携で、捜査機関の対応力を高める。[2] 今回のキャンペーンは、その中の一般向けの啓発にあたる。[1] 捜査機関向けの研究と研修を重ねたうえで、被害を受ける側の一般の人に直接働きかける段階に進んだ形である。
捜査機関の支援から、一般向けの啓発へ
日本政府が資金を出すINTERPOLの事業を時系列に並べる。
INTERPOLの事業
2025年3月
2026年2月
2026年3月
10月19日
2027年2月
出典 INTERPOL(2026-10-19)、Project SynthWave、Project SynthWave PLUS
3. 日本の企業にとって何が変わるか
日本政府が資金を出す事業の成果は、日本企業にとっても使える材料である。INTERPOLが企業に勧める対策は、どれも特別な製品を必要としない。
例えば、上司や取引先の顔と声で「至急この口座に送金してほしい」とビデオ通話が来た場面を考える。AIは、これまで詐欺に気づく手がかりになっていた不自然さを減らしている。そこで頼りになるのは手順である。一度電話を切り、登録済みの連絡先からかけ直して確かめる、金額が大きい場合は対面で確認する、と決めておけば、偽物の出来がよくても送金の前に止められる。
経理や総務だけでなく、取引先とやり取りする営業や、データを扱う開発の担当者も対象に入れたい。研修で実際の手口を見せ、確認の手順が例外なく守られているかを定期的に確かめることが、ディープフェイクへの備えになる。
INTERPOLは個人に向けて、家族や親しい人と合言葉を決めておくことや、すべてのアカウントで2段階認証を有効にすることも勧めている。[1] 社内でも、役員や経理の担当者の間で確認用の合言葉を決めておけば、ビデオ通話の相手が本人かどうかを確かめる手段が増える。被害に気づいたら、すぐに警察へ相談し、送金した場合は銀行にも連絡するよう求めている。[1]
まとめ
技術・取り組み / 2026年10月19日
INTERPOL、AIの偽動画・偽音声を使った詐欺への啓発を開始
INTERPOLは、生成AIで作った偽の映像や音声を使う詐欺への啓発キャンペーンを始めた。合言葉は「待つ、確かめる、餌に食いつかない」。
資金 日本政府(Project SynthWave PLUS)
道具 高い技術や投資がなくても、顔や声を再現できる
標的 著名人だけでなく、一般の人が狙われている
積み重ね 2025年から、捜査機関向けの研究と研修を進めてきた
1 送金やデータ移転を、登録済みの別の連絡先で確かめる手順があるか
2 多額の送金を、対面などで本人と確かめてから行う決まりがあるか
3 ディープフェイクやなりすまし電話の研修を、関係する部署で行っているか
出典 INTERPOL(2026-10-19)












